ゲーテ的な植物観察のアプローチに学ぶこと

今年は、予定していた飛ぶフラワーエッセンス教室のすべての植物観察会は中止となってしまったので、従来のような形で観察会を通して学んでいただくことは難しいですが、ゲーテ的な植物観察を通して何が学べるのかについて書いてみたいと思います。(今度開催するオンラインでの植物観察基礎講座の重要な部分でもあります。)

その一つは「自分の世界を出て、目の前の植物に出会う」ということです。

先入観や主観…花に重ねて見ているもの

たいてい私たちは無意識のうちに個々の植物について先入観や勝手なイメージをもっています。たとえば、「チューリップの花」と言われると、3つの先端をもつカップのような形を思い浮かべたりします。

また、植物のもつ姿かたちや仕草が与える印象を「元気そう」とか「寂しそう」と感じることあありますが、それらは植物の特徴のある面を捉えている一方で、自分自身の内面の影響も受けています。たとえば寂しい思いをしているときに見たうつむき加減に咲く花には「寂しげな花」という印象を持ちやすいのではないでしょうか。

あるいは、赤いチューリップの花のそばを通り過ぎるとき、「赤だ」と認識した後の私たちが見ているのは、目の前のチューリップの花の色なのか、それとも自分の頭の中の赤なのか・・・。

先入観や主観を脇に置く

そこで私たちがまず行わなくてはならないのは、そうした先入観や主観を脇に置いて、現に目の前の植物に向き合うことです。「元気そう」とか「寂しそう」を脇に置いて、あるいは、「きっとこうだろう」みたいな予測を捨てて、目の前の植物の姿かたちや色が現にどうかを丹念にたどることです。

個人的な経験からいうと実際にこの作業をやってわかることは、「ああ、自分は・・・をきっと〇〇だろうと思っていたんだな、でも実際は違うんだな」ということです。自分の先入観や主観に気づくことと、目の前の植物が現にどうかということが分かることは、同時に起こります。そして、それは一種のアハ体験のような感覚です。

自分の理解の枠に収まらないものをそのままに

対象にこのように向き合うことは、普段の生活ではほとんどないかもしれませんね。私たちは通常、対象を分析して分類して自分の知っている体系の中に収めようとします。それは左脳のはたらきと言われていますが、そうすることで私たちは理解した気持ちになるし、落ちつきます。

けれども、こうした観察でやろうとしていることは、自分の主観の世界や、自分の理解の枠から出ることです。そこに収まらないものを収まらないままにして、形や色を丹念にたどることです。これは右脳の作業です。自分の世界を出て、植物に意識を添わせることです。植物の形や色をたどり、それを経験することです。それによってはじめて私たちはすでに知っている植物ではなく、現にいまここにある植物そのものに出会います。

私たちと植物が共有している自然、いのち

自分の主観の世界や、理解の枠を超えて、目の前の植物に出会う経験は、自然の不思議、いのちの不思議に出会うような経験に感じます。そのときに私たちが経験する心の動きは、主観や先入観ではなく、私たちと植物が共有している何かを感じて起こるものだと思います。それを探求しようとするのがフラワーエッセンスで行われる植物観察です。そして、そのときの私たちの心の動きがフラワーエッセンスの作用と直接つながっているのです。

対象が人の場合には…

何度も植物観察をしていていつも思うことがあります。それは、この植物観察のアプローチは人を理解するうえでもとても大事なことだということです。私たちは、先入観や主観で人を見てしまいがちです。それは誰にでも普通に起こっていることです。

けれども、私たちが人に思いを寄せるときには、植物を観察するときのように自分の世界を出る必要があるのではないかと思うのです。現在の立場も状況も、これまでの歴史も、そして価値観や人生観も違う「他者」に、先入観や主観を脇に置いて、その人がどんな一日を生きているかに思いを寄せるには、自分の世界から出て想像力を働かせる必要があります。

立場の違いや価値観の違いを超えて

現在の新型コロナウィルスの影響による困難な状況の中で、最前線で新型コロナウィルスに立ち向かってくださっている医療従事者や保健所の方たち、ライフラインを支えてくださっている方たち、苦境に立たされている方たち・・・。そうした方たちへのエールや支援がさまざまな形で起こっています。もちろん、まだまだ十分ではありませんが、こうした行動や活動が可能になるのは、まさに、自分のことを少し横に置いて、自分の世界を出て、「他者」の世界に思いを寄せる方々がたくさんいらっしゃるからだと思います。このこと自体が本当に大きな希望です。

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