オリーブと人のかかわり、その歴史と物語

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先日、SEED1のクラスでオリーブのフラワーエッセンスについて参加者の方の服用経験を聞かせてもらう機会がありました。とても興味深かく、以前にAFETのニュースレターに書いた記事「オリーブと人のかかわい、その歴史と物語」のことを思い出しました。

この記事の最初に書いている「鉢植えのオリーブの苗木」のうちの1本は枯れてしまい、もう1本は今年初めて花を咲かせました。

オリーブと人類の歴史はオリーブのフラワーエッセンスを理解する上でも大事にしたいなと思います。というか、オリーブのたましいに感謝です。ちょっと硬い文章ですがそのまま掲載してみました(^^)

オリーブ

はじめに

いま、自宅のベランダには鉢植えのオリーブの苗木が2本元気に育っている。5月の末に開催された「フラワーエッセンスの花と植物に親しむ会・オリーブの恵みを受け取る」で小豆島を訪れたときに購入して持ち帰ったものだ。オリーブ畑に足を踏み入れるのも、じっくりとオリーブを観察するのも、そのときがはじめてだったが、以来私はオリーブが好きになった。それで育てることにした。

オリーブと私の個人的な物語は始まったばかりということになるが、オリーブと人類の間には太古の時代から物語が存在している。オリーブは日本で栽培されるようになってまだ百年余りにしかならないが、それでもオリーブと聞いて思い浮かぶイメージにはかなりの普遍性があるように思われる。ここでは神話や聖書などに登場する物語のいくつかに注目し、オリーブと人間のかかわりについて、またその中でオリーブが象徴するものについて考えてみたい。

 

生命の樹

歴史を遡ってみると、オリーブほど古い時代から人間とのかかわりが語られている植物はほかにない。しかも注目すべき点は、そのかかわりが自然のままのオリーブとのかかわりではなく、「栽培」を通してのかかわりだということだ。

栽培の起源は約六千年前の地中海東方の地域だったのではないかと言われている。今日と同じように実は食用にされ、油は料理などに使われて大切な栄養源となっていた。それだけでなく、灯火の燃料としても、また医療分野で傷の手当に用いる膏薬の原料としても使われた。さらに、魔術的な病気治療にも、死者のための化粧や聖油として神々への捧げものとしても使われた。古代の人々にとってオリーブは生活をあらゆる面から支える自然の恵であり、まさに「生命の樹」だった。

 

聖なる樹

ブロス(1993, 藤井・藤田・善本共訳 1995)によれば、ギリシア語では熟したオリーブの実に関連する単語に、「聖なるものとしての樹」という意味をもつdrusに由来する語根dru-がついている。drusは通常オークの樹を指す語に使われるのだが、熟したオリーブの実に関連する単語にも見出される。その理由はオリーブの栽培が深くかかわっている。黄金時代(*1)の人々の主要な食べ物はオークの実、ドングリだった。その減少とともに黄金時代が終わりを告げ、オリーブの栽培が始まった。それによって聖なる樹がしだいにオークからオリーブへと移り変わっていったのだ。

 

聖書の中のオリーブ…神と人を結ぶ

栽培以前に分布していた地域は小アジアだったと考えられている。オリーブの樹やオリーブ油については旧約聖書、新約聖書の至るとことに記述がある。この地が初期の分布地であり、栽培が始まった地域であることを考えれば自然なことであり、ヘブライ人(古代イスラエル人)の生活にとって欠くことのできないものだったことがわかる。

聖書に登場するオリーブに関する記述の中で私たち日本人にもなじみの深いものは、創世記の中で洪水の後ノアが放った鳩がオリーブの葉をくわえて戻ってくる場面ではないかと思う。ノアはそれによって水が引き始め陸地が現れたことを知る。この逸話には現在の私たちがオリーブに対してもっている「平和」のイメージが象徴されている。

 

士師記(*2)には、樹々が自分たちの王にふさわしいと思う樹に対して、王になってくれるように頼むという話がたとえとして語られている。そのとき樹々が最初に選んだのがオリーブの樹(次いでイチジク、ブドウ)だった。それほどオリーブは特別な存在であったことがわかる。そして、そのときのオリーブの答えは、「神と人に誉れを与えるわたしの油を捨てて、樹々に向かって手を振りに行ったりするものですか」というものだ(スミス 1884, 藤本 2006, pp335-7)。「樹々に向かって手を振る」とは王になって民衆に向かって手を振る行為を示している。つまり、オリーブ油となって果たしている自分本来の「神と人に誉れを与える」役割を捨てて、王になったりすることがどうしてできようかというのだ。

オリーブ油は聖別にも用いられた。聖別は人や物を神に仕える目的で用いるために、聖なるものとする行為である。また神から使わされた救世主、メシアは、ヘブライ語で「主に油を注がれた者」を意味している。ギリシア語では「聖油の塗布を受けた者」(Khristos)と呼ばれる。もちろん、この油はオリーブ油である。オリーブは当時の人々の日常を物質的に支えただけでなく、神と人間との契約の象徴でもあったのだ。

 

コーランの中のオリーブ…光の源

ユダヤ教、キリスト教だけでなくイスラム教でも、オリーブの樹は特別な樹として扱われる。それは世界の中心にあり、世界を支える宇宙樹であり、オリーブ油は光の源と考えられている。「『コーラン』のスーラ第二四では、光について次のように説明されている。『アッラーは天と地の光、この光をものの喩えで説こうなら、まず御堂の壁龕(へきがん)(*3)においた燈明か。燈明は玻璃(はり)(4*)に包まれ、玻璃はきらめく星とまごうばかり。その火を灯すはいともめでたき橄欖樹(かんらんじゅ)(オリーブの樹)で、これは東国の産でもなく、西国の産でもなく、その油は火に触れずとも自らにして燃え出さんばかり。』」(ブロス 1993, 藤井他訳 1995, 389p)

 

女神アテナとオリーブ(古代ギリシア)

オリーブの樹は初代アッティカの王ケクロブズによってエジプト、あるいはリビアからギリシアにもたらされたといわれている。ケクロブスは半身半蛇の神で、当時のアクロポリスはケクロベイアと呼ばれていた。

ギリシア神話ではこのアッティカの地の領有権をめぐって女神アテナとポセイドンが競い合う有名な逸話がある。他の神々の前でどちらがこの地の守護神にふさわしいかを争った。

ポセイドンが彼の三叉の矛をアクロポリスの丘に突き立てると、井戸ができ、その井戸からは塩水が湧き出した。一方アテナが楯で大地を突くと、その井戸のそばにオリーブの樹が生えた。オリュンポスの神々たちは証人としてケクロブスを呼び、ケクロブスはアテナに有利な証言をした。神々たちの中の男神たちは皆ポセイドンを、女神たちは皆アテナを指示した。結局アテナが勝利し、それ以後アテナがアッティカ地方の守護神となり、この地の首府はアテナイ(現在のアテネ)と呼ばれるようになった。

アテナイという名称(複数形)は女神アテナの楯の下に成立した都市連合を示している。このことによって、ケクロブスはアッティカ地方の英雄となり、アテナとともにこの地にオリーブの樹をもたらした名誉を分け合うことになった。このギリシア神話の逸話からもオリーブの樹が当時の人々にどれほどの恩恵をもたらしていたかを量り知ることができる。

 

結び

聖書などの経典のいたるところに登場するオリーブの記述を通して、またギリシャ神話に登場するオリーブの逸話を通して、いかにオリーブが人類の歴史の中で重要な役割を果たしてきたかを見てきた。もともとの分布地であり、最初の栽培地である土地の気候や、その地に暮らす人々の宗教について理解の浅い日本人の私ですら、オリーブと人とのかかわりの深さに感銘を受けるのだから、太古の時代からオリーブと歴史をともにしてきた民族にとっての重要性は文字通り計り知れない。

その重要性について次の二点を強調しておきたい。まず第一に、オリーブと人間との関係が「栽培」という形を通してのものであったことだ。自生しているオリーブの樹に人間が手を入れ、それによって自然の恵みを受け取るという関係であり、それが黄金時代の終焉を意味し、自然との新しい関係が生まれた。オリーブと人間との関係ははじめから聖書に登場するような意味合いをもっていたわけではなく、「栽培」を通して築かれ深められていったと考えられる。

第二に、オリーブが人々の生活に欠かせないものであり、重要であったのは、物質的な意味や経済的な意味だけではなく、真に精神的な意味でも人々を支えてきたことが重要だと思われる。聖書やイスラム教のコーランの中では、オリーブの樹やオリーブ油が聖なるものとして扱われ、神との契約の象徴であった。

当時の人々は現在の私たちのように、物質と精神を分けて見る、あるいは分けて経験するようなことはなく、両者を一つのものとして経験していたのだろうと思う。聖なるものを抽象的にではなく日常の皮膚感覚で捉えていたのではないかと思う。物質と精神という二元性を超えた形で自分たちを外からも内からも支える存在がオリーブだったと考えられる。

そのオリーブに関する記述が聖書の中で最初に認められるのは、創世記の大洪水が引き始めたときである。このことはオリーブが平和の象徴としてみなされる所以として語られることが多いが、オリーブのもつ象徴性の一つは、人の深いところにある自然と人のかかわりの原点を思い出させてくれるような希望にあるのではないかと思う。

 

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1.黄金時代:ギリシア神話でクロノスが神々を支配していた時代で、世界は平和と調和に満ちていて、人間は労働の必要がなかった。

2.士師記:旧約聖書のヨシュア記とサムエル記の間にある歴史書。
3.壁龕(へきがん):西洋建築で、厚みのある壁をえぐって作ったくぼみ部分。
4.玻璃(はり):ガラスの異称。

参考文献

1. ジャック・ブロス 1993、藤井史郎・藤田尊潮・善本孝共訳 1995「オリーブの樹とアテナイ創設」『世界樹木神話』pp.383-95
2. ウイリアム・スミス編纂 1884、藤本時男編訳 2006「OLIVE」『聖書植物大事典』pp335-43
3. 中島路可「オリーヴ」『聖書の植物物語』ミルトス 2000 pp61-3

 

オリーブ

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