影踏みとPERFECT DAYS
何気なく、PERFECT DAYS
※PERFECT DAYSの内容について書いています。ネタバレあります。
何気なく、アマゾンプライムビデオを見た。
・・・何気なく。
ずっと読書会(『影の現象学』河合隼雄著)の準備で、第1章を書き写していて、その作業に疲れたので息抜きに・・・何気なく。
「PERFECT DAYS」
役所広司さん演じる、東京・渋谷でトイレの清掃作業員として働く男性の一日一日を描いた作品。監督はヴィム・ヴェンダース。公開は2023年12月22日。
「影って、重ねると濃くなるんですかね?」
そうしたら、「PERFECT DAYS」の終盤にこんなセリフに出会った。
役所さん演じる平山が、好意を抱いているママのいる小料理屋に行ったとき、開店前の店のなかで男性と身を寄せ合っているママの姿をドアのすきまから目にして、その場から自転車で走り去る。
平山は普段は飲まない缶ビールを3本とピース(煙草)を買って、河川敷の橋のたもとに行き、缶ビールを飲み、むせながら煙草を吸う。その平山のところに、ママと身を寄せ合っていた男性(友山:三浦友和)が不意にやってくる。
「1本もらっていいですか?」
彼もまたむせながら煙草を吸い、自分は元夫であること、癌を患っていること、会っておきたくなったことなどを平山に告げる。
平山は買ってきた缶ビールの1本を友山に渡す。
二人で缶ビールを飲んでいると、友山が唐突につぶやく。
「影って、重ねると濃くなるんですかね?」
「さあ・・・」
影踏み
このやり取りの後、平山は友山の腕をとり、「やってみましょうか」と橋のたもとの灯りのあるところに連れて行き、影が重なるとどうなるかやってみる。そして、二人は影踏みをする。
ぜひ、実際に映画を見ていただければと思います。
『影の現象学』の第1章第1節の「影のイメージ」の「影とたましい」では、イギリスの社会人類学者ジェームズ・フレイザーによって著された『金枝篇』から、未開人が影に対してどのような態度をとるかが記されています。
このような点から考えると、子供たちのする「影踏み」の遊びは、おそらく古代の宗教的儀式から派生してきたものではないかと思われる。
河合隼雄『影の現象学』p.18
今まで述べてきたことによって、未開人にとっての「影」の重要性が認められたことと思う。影はその人間の体の一部のように考えられるか、あるいは、われわれが「たましい」と呼んでいるものに同定して考えられているようである。
河合隼雄『影の現象学』p.20-p.21
未開人の影に対する態度と、私たちが実際に感じる影とのつながりをどんなふうに説明しようかと考えていたところだったので、読書会は、きっと「PERFECT DAYS」と影踏みの話から始めるだろうと思います。
影踏みって、もうずいぶんやっていないなあ。
でも、実際にやってみると、きっと本気になるだろうと思います。影を踏まれそうになるときの感覚は、他にたとえようのないくらいリアルな感じがあって、ついつい大人でも本気になってしまうように思います。
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