ワイルドローズと「いばら姫」の物語

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ジュリアン・バーナード氏は『バッチフラワーレメディ 植物のかたちとはたらき』の中で、ワイルドローズについての考察を、グリム童話の「いばら姫」(「眠りの森の美女」)の物語から始めて、次のように述べています。

「…つまり、錘で刺されることは、意図的な行為が何らかの形で、人生の糸を断ち切ることを意味しているのかもしれません。眠りに落ちることは、人生を滑り抜けること、すなわち物事を改善しようと努力せず、あるがままに受け入れることを表しているとも考えられます(これはバッチが説明したワイルド・ローズの状態です)。たとえとげで突き刺されようと、何人もの王子が城を訪れることは、魂あるいは自己が、男性性と女性性の統合によって再び1つになろうとする、たゆみない努力を示しているのかもしれません。この努力が王女の眠っている100年の間に数多くの命をかけてなされるのです。いばら姫を目覚めさせるキスは、深まる人生の喜びや、失われた自然王国の復活を連想させます。すべてはこの物語の解釈の仕方によりますが、この話には、ワイルド・ローズの示す象徴性やジェスチャー(外見、生育の仕方、生き様)との結びつきが表れています。バッチ博士はワイルド・ローズを、意志の力を眠らせ、無関心になっている人のためのレメディーとして選びました。」(*1)

ワイルドローズ(2015/5/10)

ワイルドローズ(2015/5/10)

 

一方「いばら姫」の物語を心理療法家の河合隼雄氏はユング心理学の立場から、女性の思春期の心理的発達の過程として読み解いていますが(*2)、その中でつむの一突きによる百年の眠りを「心理的成長のための試練」という視点で見ています。

眠りに落ちることは、「物事を改善しようと努力せず、あるがままに受け入れ」ていると見なすこともできますが、それは表面に現れた態度で、内的には新たな可能性(河合氏の解釈では女性性)を実現しようとして試練に出会い、傷つき眠ることを余儀なくされている過程だと見ることもできるのではないでしょうか。

そして、少女は「その時」が来るまで、いばらの垣に守られて眠ります。いばらはお城の内と外を隔て、外側からみれば無関心をもたらすかもしれませんが、内側からみればお姫さま自身が安全に眠ることを守っているとも考えられます。

そして、お姫さまは「時が満ちて」眠りから覚めます。この時間について河合氏は次のように述べています。「われわれは時計によって計測し得る時間としてのクロノスと、時計の針に関係なく、心のなかで成就される時としてのカイロスとを区別しなければならない。時計にこだわる人は、重大なカイロスを見失ってしまう。」(*3)

確かにジュリアン・バーナード氏がワイルドローズの解説の冒頭に取り上げたように、この物語はワイルドローズのテーマに深い関連があるように思われます。ワイルドローズのテーマは「意志の力を眠らせ、無関心になっている人」のものとみなすこともできますが、すべての人の中に眠る「いばら姫」に関するテーマとしてもとらえることができるのではないかと思います。

私たちの人格は、生まれながらにもっている個人の可能性と、生まれてきた環境の相互作用によって形成されていくわけですが、その過程で試練や困難に出会い、いばらの垣で囲まれた内側のお城に眠らせているものが誰にでもあるのではないかと思うのです。

私たちは眠らせているものがあることを忘れて普段の生活を送っています。守るために砂の中に埋めた宝物があることをやがて忘れてしまうのかもしれません。しかし、それを思い出して生きることができれば、いばら姫が「我に返り、しんから懐かしそうに王子さまを見つめた」ように、たましいにとって真に幸せなことです。そして、それは世界への贈り物となるでしょう。

ワイルドローズと「いばら姫」の物語は、傷つくことと成長のための試練、いばらに守られて眠る時間の必要性と時が満ちることなど、私たちにこころの奥深くに語りかける力をもっているように思います。

 

ワイルドローズ(2015/5/10)

ワイルドローズ(2015/5/10)

 

「いばら姫」のあらすじ————————————————-

子どもがほしいと望んでいた王さまとお妃さまがいました。ある日お妃さまのところにやってきたカエルがやってきて、望みがかなえられること、お姫さまが授けられることを予言します。予言の通りに女の子が生まれ、その祝いの宴に仙女たちも呼ばれます。

この国には13人の仙女がいたのですが、招きを受けたのは12人の仙女でした。招かれた仙女たちはそれぞれに魔法の贈り物をしました。「徳」や「美しさ」や「富」など、おおよそ世の中の人が望むものはすべて授けられました。

11番目の仙女が贈り物をした後、宴に招かれなかった13人目の仙女が不意にやってきて、お姫さまは十五の年につむに刺されてなくなると宣言しました。この呪いに人々は震え上がったのですが、まだ贈り物をすませていない12番目の仙女がその呪いを解くことはできないけれども軽くすることはできると、お姫さまは死ぬのではなく、百年の間ぐっすり眠ることになるでしょうと言いました。王さまは国中におふれを出してつむを残らず焼き捨ててしまうように命じます。

お姫さまがちょうど十五になった日、たまたま王さまもお妃さまも出かけていてお姫さまは気の向くままにお城の部屋を見てあるき、とうとう古い塔にたどり着きます。古い塔の小さな部屋ではおばあさんがつむを手にしてせっせと麻糸をつむいでいました。

興味をもったお姫さまはつむを手に取り、呪いの魔法の通りにつむで自分の指を突き刺してしまいます。そして、お姫さまはもちろん、王さまもお妃さまも、そして家来たちや馬や犬やかまどの火までもが眠りに落ちてしまいました。お城のまわりにはいばらの垣が茂り始め、しまいにはお城全体をすっぽりと覆い隠してしまいました。

眠る美しいいばら姫のうわさは国中に広まり、うわさを聞きつけては王子がやってきて生垣を切り開いて城の中に入ろうとしましたが、みな二度とふたたび抜け出せなくなってあえない最後を遂げるのでした。

長い年月が過ぎ、また一人の王子がうわさを聞きつけてやってきました。このときちょうど百年の歳月が過ぎ去っていました。おりから垣は一面に大きな美しい花におおわれていて、王子がいばらの垣に近づくとひとりでに左右に分かれ、かすり傷一つ負うことなく通ることができ、しかも通ったあとはまたもとのようにふさがるのでした。

お城の中に入ることのできた王子はとうとう塔まで行き着いて、いばら姫の眠る部屋に入ることができました。王子はいばら姫の美しさに目をそらすこともできず、かがみこんでキスしました。すると姫は目を覚まし、我に返り、しんから懐かしそうに王子さまを見つめたのです。やがて王子さまといばら姫との婚礼が行われ、二人は最後まで幸せにくらしました。

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*1:ジュリアン・バーナード 谷口みよ子訳『バッチフラワーレメディ 植物のかたちとはたらき』265p
*2:河合隼雄『昔話の深層』講談社 143p
*3:河合隼雄『昔話の深層』講談社 165-166p

2 コメント

  1. 仲村理恵

    1年程前にいばら姫のお話と絡めた占星術の講座に参加したことがあります。

    それまで、いばら姫のお話は、勇敢な王子様がいばらを切り開き傷を負いながら
    お姫様に会えたのだとばかり思い込んでいたのですが
    (この行為は意志の力・占星術でいうと太陽かな)

    時が満ちたら自然に扉が開いたと知って何だか笑ってしまいました。
    いばら姫は完全に占星術で言う所の「月(無意識)」のお話であると思う。というお話でした。

    そういうこ事と合わせてみてもクロノスとカイロスが出会った瞬間ともいえますね~

    でもやはり最初に必要なのは意志の力と言うよりは
    何かが満ちる事ではないかな。と思っり。

    実際にワイルドローズを見てみたいな。

    返信する
    • takahara

      仲村さん、コメントありがとうございます!

      僕は星座のアーキタイプについては疎いので、また今度教えてください。
      「クロノスとカイロスが出会った瞬間」を僕らは「意味のある偶然の一致」として経験するのでしょうね。

      ワイルドローズに会えますように。

      返信する

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