植物観察を通して得られる2つのもの
植物観察を通して得られる2つのもの

ずばり、結論から言うと、
2つのいいところがあると思っています。
1つは「センスオブワンダー」を体験できる。
もう1つは自分の世界(枠)を出る経験をすることができる、です。
センス・オブ・ワンダー(sense of wonder)
直訳すると、「驚きの感覚」ですが、
単に驚くだけではなくて、
同名(The Sense of Wonder)のレイチェル・カーソンの著書を翻訳した上遠恵子氏は、
自然やいのちに触れて
「神秘さや不思議さに目を見張る感性」と訳されています。
レイチェル・カーソンは、一般の人々に
化学物質が環境に及ぼす影響を知らしめた
アメリカ人の生物学者です。
『沈黙の春』(1962年)によって
環境汚染の実態を告発し、
環境問題の先駆的役割を果たしました。
『沈黙の春』を書き終えたとき、
彼女は残された時間がそれほど長くないことを知っていて、
最後の仕事として
『センス・オブ・ワンダー』を選びました。
しかし、未完のまま1964年に56歳でこの世を去りました。
その翌年彼女の遺志を受け継いだ
友人たちの手によって出版されたのが
『センス・オブ・ワンダー』です。
この作品は彼女が姪の息子ロジャーといっしょに
海辺や森を探検した経験をもとに書かれたものです。
神秘さや不思議さに目を見はる感性
著書のなかでレイチェル・カーソンは次のように語っています。
もしもわたしが、すべての子どもの成長を見守る善良な妖精に話しかける力をもっているとしたら、世界中の子どもに、生涯消えることのない「センス・オブ・ワンダー=神秘さや不思議さに目を見はる感性」を授けてほしいとたのむでしょう。
レイチェル・カーソン『センス・オブ・ワンダー』
妖精の知りあいがいないとしてもご心配なく。
まず大人の私たちが時間とエネルギーを
自然と響き合う時間に費やす決意をすれば、
センス・オブ・ワンダーを自分のなかに
育てることができます。
ゲーテの自然観察のアプローチをベースにした植物観察は、
私たちにこの機会を与えてくれます。
植物観察の講座では、いつも
「おーーー!」とか、
「あっ!」とか、
「そうかー!」といった言葉が飛び交います。
不思議を発見した時の声です。
頭で知っている植物ではなく、
目の前の生きた植物に出会った瞬間の声です。
そして、さらに不思議なことに、
そのとき新しい自分とも出会ったような感覚がします。
ほんとうには見ていない
レイチェル・カーソンは次のようにも述べています。
わたしたちの多くは、まわりの世界のほとんどを視覚を通して認識しています。しかし、目にはしていながら、ほんとうには見ていないことも多いのです。見すごしていた美しさに目をひらくひとつの方法は、自分自身に問いかけてみることです。 「もしこれが、いままでに一度も見たことがなかったものだとしたら? もし、これを二度とふたたび見ることができないとしたら?」と。
レイチェル・カーソン『センス・オブ・ワンダー』
日常を生きる私たちに起こっていることは
「ほんとうには見ていない」というです。
ほんとうには見ていないし、
ほんとうには聴いていない。
ということは日常では普通にあります。
でないと生活していけない面もあります。
けれども、日常のあり方を越えて、
ほんとうに見て、ほんとうに聴く時間も
私たちには絶対に必要です。
それはきっと外側の自然と
私たちの内なる自然が響き合う時間です。
自分の枠を出る
植物の細部にまで意識を届けると、
たくさんの発見があります。
その発見と同時に、
今までの思い込み(先入観)に気づき、
その思い込みが剥がれ落ちるという経験をします。
そしてそのとき、私たちは自分が制限していた枠を出ます。
自分の世界を出て観察している目の前の植物に
触れる瞬間でもあります。
自然の一番繊細な手仕事は、小さなもののなかに見られます。雪の結晶のひとひらをむしめがねで虫めがねでのぞいたことのある人なら、誰でも知っているでしょう。
レイチェル・カーソン『センス・オブ・ワンダー』
また、いろいろな木の芽や花の蕾、咲きほこる花、それから小さな小さな生きものたちを虫めがねで拡大すると、思いがけない美しさや複雑なつくりを発見できます。それを見ていると、いつかわたしたちは人間サイズの尺度の枠から解き放たれていくのです。
レイチェル・カーソン『センス・オブ・ワンダー』
この経験を重ねていくと、
植物を「もの」としてではなく、
同じ「いのち」として
経験することができるようになっていくのだと
個人的には思っています。
レイチェル・カーソンはこのことを
「人間サイズの尺度の枠から解き放たれていく」と表現しています。
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