ツユクサの研究発表
ツユクサの研究発表
ツユクサには
個人的な思い出があります。
SHASでフラワーエッセンスを学んでいたとき、
長野で行われた合宿中に、
ツユクサの研究発表をしました。
1年をかけてツユクサのところに通い、
はじめて深いつながりを
経験させてもらった植物。
ツユクサは僕にとってそういう存在です。
還暦過ぎたおじさんがいきなり?!
と思われるかもしれませんが、
もう、これはしょうがないです。
なので、還暦前のおじさんだと思って
聞いてください。(いみふめい)
その発表の場で経験したことが
今の自分の活動につながっています。
そのとき調べたツユクサ属の学名の由来や、
日本人が「露」に関して抱くイメージなどは、
特に印象に残っていて、
何度も足を運んで関係を深めた
ツユクサの存在感につながっています。
そのことを少しシェアさせてください。
植物とフラワーエッセンスの性質の関係に
関連することです。
ツユクサ属の学名の由来
ツユクサ属の学名の由来は
とても興味深いものです。
リンネはツユクサ属の特徴、
3枚の花弁のうち2枚が
色(青色)や大きさの点で、
他の1枚よりも目立つことを、
オランダのある一族から出た
3人の植物学者と重ね合わせて、
名づけたと言われています。
17世紀~18世紀に
オランダのコメリン (Commelin)家という一族から
3人の植物学者が出ました。
そのうちの2人(ヤン・コメリンと
甥のカスパー・コメリン)は
業績を残しましたが、
カスパーの息子は
志半ばで亡くなったため、
名を遺すことができませんでした。
ツユクサの属名 Commelina は
ヤン・コメリンとカスパー・コメリンに
捧げられたものだということです。
ということは、目立たない
(目立たないため、ツユクサの花弁は
青い2枚の花弁だけと思っている人さえ
あるかもしれません)
半透明の小さな花弁は、
カスパー・コメリンの息子を
象徴していることになります。
ツユクサは、
普段の意識では見えなかったり、
気づかないけれども、
確かに存在する大切なものを
思い出させてくれるように思います。
「露」のイメージ
「ツユクサ」という名前は、
もともとは「ツキクサ」から来ています。
「ツキクサ」は
万葉時代のツユクサの呼び名です。
ツキクサという名前は、
染料に使うために
花を臼で「ついた」こと、
あるいは色が「つく」花であることに
由来すると言われています。
しかし、ツユクサの花の青色色素は不安定です。
すぐに色あせてしまいます。
万葉人にとってツキクサは
「移ろいやすさ」のイメージと
結びつきました。
この花がもっとも生き生きと咲く時期は、
ちょうど露が降りる時期と重なります。
朝日にあたるとはかなく消えてしまう
「露」のイメージが、
ツキクサの移ろいやすさのイメージと重なって、
「ツユクサ」と呼ばれるように
なったのではないかと推察されます。
「露」は万葉以降の和歌に
数多く読まれています。
いのちのはかなさ、
人の世のはかなさの象徴
とされています。
けれども、もう一方で
「菊の露」
「蓮の露」
といった用例では、
不老長寿や極楽往生と
結びついた意味をもって
使われています。
この世においては
限りなくはかないものであるからこそ、
それが反転して
あの世に向かっては、
永遠の象徴にもなり得るように思われます。
ツユクサの「露」は
この世界のはかないものの象徴であると同時に、
たましいの世界での
永遠の象徴なのかもしれない
というイメージを掻き立てられます。
植物を観察しよう
以上のような、学名の由来や、
日本人とツユクサの関係などは
とても興味深いですね。
インターネットの発達によって、
このような情報にも簡単に
アクセスできるようになりました。
けれども、それだから余計に、
時間とエネルギーを費やして
情報の真偽を調べたり、
植物のところに出かけて行き、
観察したり、共に時間を過ごす経験が
とても大事だなと思います。
実際に間違った情報
(Commelin家の3人の兄弟となっていたり…)
も結構あったりします。
ツユクサとの長年の付き合いによって、
僕のなかでは、
ツユクサは
見ようとしなければ見えないものの価値や、
たましいの真実を思い出させてくれる
植物になっています。
ちょっと大げさに聞こえるかもしれませんが、
ある意味生きる支えになっています。
みなさんも、ぜひ好きな野草を
観察に出かけてみてください。
花の声に耳を澄ましてみてください。
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参考文献
朝日百科 植物の世界11
大場秀章(2002)『道端植物園』平凡社
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