傷を負った癒し手とフラワーエッセンス(2):神話の中のキロン
傷を負った癒し手とフラワーエッセンス(2):神話の中のキロン
傷を負った癒し手とフラワーエッセンス(1):エドワード・バッチ医師の命日が近づいて・・・からの続きです。
まず、神話から・・・
神話の知
生きるための深い知恵を学ぶ素材として、「神話」がある、と私は思っている。「神話」などというと古くさい、それにわけのわからぬお話がどうして現代に役にたつのだろうか。それは、人間存在のもっとも根源的なことにかかわることが、神話に語られているからである。(*1)
The Wounded Healer
ギリシャ神話に登場する半人半馬の種族ケンタウロスのキロン Chiron(ケイローン Cheiron)は、「傷を負った癒し手」(The Wounded Healer)の元型的イメージとして取り上げられることがよくあります。
ケンタウロス
キロンは半人半馬のケンタウロスですが、ケンタウロスの出生を調べてみると・・・
テッサリアの王イクシーオーンが女神ヘーラーに恋してヘーラーと交わろうとしたので、それを聞いた夫ゼウスが真相を知ろうとして雲をヘーラーの姿に似せてイクシーオーンのもとにやったのです。そして、イクシーオーンと「雲」の間に生まれたのが半人半馬のケンタウロスです。(*1)
イクシーオーンは人間でありながら、最高神ゼウスの妻と交わろうとするという恐れ知らずですが、ゼウスからきっちり罰を受けていて
そしてヘーラーと交わったと誇っているイクシーオーンを車輪に縛りつけ、彼は空中に風によって引き廻され、かくてかかる罰を彼はうけている。(*2)
このような出生をもつケンタウロスは、一般に野蛮で粗暴、好色で酒好きという性格のようです。
キロンの出生
ところが、キロンは例外でした。一般に野蛮で粗暴なケンタウロスですが、彼は思慮深く勇敢で心温かい賢者でした。
それは彼の出生が他のケンタウロスとは違っているからかもしれません。彼は、大地と農耕の神であり、一時期神々の王でもあったクロノスと樹木の女神ピリュラーの子どもで、クロノスが馬に姿を変えてピリュラーと交わったために、上半身が人間、下半身が⾺の姿になったといわれています。(*3)
だから、キロンは神の血を受け継いでいて不死です。まだ傷の話までいきませんが(^^;、キロン自体、物凄くの相矛盾する要素をあわせ持つ存在だと思いませんか?
一方で馬の下半身をもち、一方で神の血を引くキロン。他のケンタウロスとは出生も異なる存在のキロン。
僕らのこころの中にも、相反する気持ちや考えや感情が住んでいて、それを自分の中に収めていくのが難しかったり、他の人にくらべて自分だけが違っているように感じるところを自分の中に収めていくのが難しいことがあります。しかし、キロンはそれらを身をもって生きている存在です。
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参考文献
アポロドーロス, 高津春繁訳 『ギリシア神話』 岩波書店, 1978
カール・ケレーニイ, 岡田泰之訳 『医神アスクレピオス』 白水社, 1997
*1:河合隼雄 『神話の心理学』 大和書房 2006, p.2
*2: アポロドーロス, 高津春繁訳 『ギリシア神話』 岩波書店, 1978, p.176
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